さわやか戦略

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わたしの前を黒猫が通り過ぎた。

お酒を割と飲んで深い話になった帰り道、黒猫がすっと通り過ぎることが多いように感じる。

黒猫が横切ると不幸なことになる、というジンクスがあるが、わたしはごくごく元気で健康である。

しかし言い伝えというのは妙なもので、そうなるだけでこれからわたしには不幸なことが舞い降りると思い込んでしまうのも事実。

その後財布を失くしたり携帯を落として画面が粉々になったり自分の中で抱え切れないような悩みに遭遇したりということもあった。

結果、財布も見つかったし、携帯も無事だったし、もやもやはすぐに晴れてしまったり。昨日まで落ち込んでいたわたしは、次の日には世の中捨てたもんじゃないな!と暢気に思う。

そうなった時には黒猫のことなんか忘れている。何か嫌なことがあったときにだけ「黒猫が横切ったのはそういうことだったのか」と、都合良く解釈する。

だが黒猫はきっと関係ない。ただ、わたしの目の前を横切っただけだ。

言い伝えや事象を前兆としてしまうのは人間の悪いところだ。

 

今日も結構お酒を飲んで、普段話せないことをたくさん話した。

いくつか思うところもあった。反省もあった。言うべきこともあった。言いそびれたこともあった。できなかった。

雨がざーざーと降っていたが、帰りはすっと止んでいた。

気分よく帰っていた。

わたしの前を黒猫が通り過ぎた。